X day 来たる。

マーケットも終わった15時過ぎ、新しい上司から秘書経由で会議室に呼び出された。
何かが来る直感で胸の内をよぎった。反射的にPCをログオフして別階にある会議室に向かう。

1週間前に着任した上司と対面。
席を立ったときの感覚は正解。一言目、良い話じゃないと。
2、3分程仕事のレビューを簡単にして、契約を継続できないと。
人事部に直行し、退職書類にサイン。今後の手続きの説明を受ける。
彼らは退職手続きの一連をパッケージと呼んでいた。僕のパッケージはこうだ。先3ヶ月間は在籍扱いで退職日は3ヵ月後。その後3ヶ月給料分を退職日に支給。つまり半年分の給料は出しますよということ。
証券会社フロントだと、呼ばれてそのまま戻れなくなるのが普通だが、特別に戻って荷物を纏めて良いと。ついでに周りの人に簡単に挨拶をして会社を出る。この時は少し気恥ずかしい。特別に荷物を纏めに部屋に入ったのは屈辱的に感じた。そそくさと退却。
気がつけば16:30。淡々と事が進んで夕暮れの横断歩道を渡ってた。


全く予測してなかったわけでもない。営業成績は頗る冴えなかったし、自分自身も外資のアニマルスピリッツというかこの職場と自分の志向性の違いに限界を感じていた。いつか来る日が今日だったのか、という妙に冷めた感じだ。
外資系証券で働く以上、クビは常に覚悟していることだし、数ヶ月前から脱外資証券での転職の準備を始めていた。そうは言っても、先立つものは全くなし。
これからどうなるかを考えると急に背中を不安が襲ってくる。僕は31歳で、もうすぐ2歳の娘と嫁の3人家族。

でも、同時に自由になれたというか、新しいステップを踏む時が漸く来たという気もしている。
席に座っていると息苦しかった。お客様にもいろいろと良くして貰っているのに正直、ご好意にお応え出来ていないし、数字が上がっていないからチームにも貢献できていない。皆に面と向かって話せない。
もっと自分を違う活かし方があるんじゃないかとか、今の仕事を根本的に革新するにはどうすればいいかとか、模索して本を読んだり勉強したりしていた。
そういった中でのイベントだったから、将来への不安と同時に、希望が実際に啓けたという気持ちも出てきている。多分、周囲が考えるほど落ち込んだりはしていない。


偶然にも今夜は馴染みのヘッドハンター氏と会う約束になっていた。そして、明日はライバル社の面接。これで振り切れて面接に集中できる…といいな、、僕。ヘッドハンター氏は予定より早く駆けつけてくれ、明日の面接頑張りましょうと。でも本当に同じ仕事にトライするの?でも確かに今はチャンスを引きつけて決意を固めるしかないのか。決意と自信と啓蒙の為の本を数冊いただく。また、明朝成田総本山に護摩祈祷に行くことに。

家について、まず妻に笑顔で報告。妻も冷静。二人とも苦痛から解放されたというのが本音だ。最近は家でも冴えない言動で、家族には迷惑をかけて申し訳なく思っていた。
とにかく退職日となる約3ヵ月後の12月末までが勝負。
さあ明日からどうする?

あまり、“リストラ”キーワードではポジティブな本は見つからず。そりゃそうか。自分に一番近い心境の一冊↑。